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【とやまもの】富山の夏の味「大門素麺」の伝統受け継ぐ『柿里商店』の「とやまものアソート」をご紹介

自然が豊かな土地だからこそ、富山県には土地ごとに特色を持った食文化があります。
今回は砺波市大門地区に江戸時代から続く「大門素麺」の技法を受け継ぎ、オリジナル商品も開発している『柿里商店』の「とやまものアソート」をご紹介します。
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富山の夏の味「大門素麺」

一般的な素麺よりも少し太く、強いコシとなめらかな喉越し。一口すすれば、富山で過ごした夏の日々を思い出す人も多いでしょう。「大門素麺」は富山県砺波市大門地区に伝わる手延べ素麺です。江戸時代、加賀藩前田家御用達の製麺技術が伝わり、その後180年の間、伝統製法として受け継がれてきました。寒さが厳しい大門地区は、冬の冷たい風を利用して乾燥させることが重要な素麺にとって適した土地柄でもあったそう。農家の冬の副業として根付き、最盛期には60軒もの生産者によって作られていました。しかし作り手の高齢化などにともない、現在はその数も一桁にまで減少。その希少価値は年々高まり、「幻の素麺」とも呼ばれています。
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幻で終わらせないために

「このままでは大門素麺の伝統が途絶えてしまうかもしれない」。そう危機感を抱いたのは、同じく砺波市で飲食店を営んでいた『柿里』です。富山の食文化を担う存在として、大門素麺が幻となりつつある現状に悲しみと焦りを感じたといいます。2016年、すでに廃業し使われていない工場を借りて『柿里商店』を設立。技術だけではなく、知識も少ないゼロからのスタートということもあり、すでにリタイアしていた職人さんたちに助力を仰ぎました。大門素麺の原料は小麦粉、塩、水とシンプルであるがゆえに、出来栄えの決め手は素材の良さと技術。その日の湿度や気温で分量を調整する感覚、技の1つひとつを受け継いでいきます。

麺は時間をかけて少しずつ伸ばすことで熟成され、コシが生まれる
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伝統を守り、未来へつなぐ

大門素麺が作られるのは農閑期である冬。そのため冬以外にできることは少なく、『柿里商店』では手持無沙汰になってしまうことも悩みの1つでした。大門素麺の技術を受け継ぎ、なおかつ1年を通して工場とスタッフがしっかりと動けるよう、2017年『柿里商店』オリジナルブランド「KAKIZATO」が誕生。女性スタッフのアイディアがきっかけとなり、紅白あわせ麺「縁のむすび」が開発されました。花や水引をイメージさせる麺の結びは、大門素麺の束ね方とは少し異なっています。大門素麺の技術を活かしながらも、さらに工夫を重ねたことで誕生した新たな手延べ麺。夏の風物詩というイメージも一新、人生の節目に彩りを与えています。

結婚や出産など、様々なお祝い事に喜ばれている紅白麺

透明な型枠も工夫の一つ。1日に1,200個~1,300個を作り上げる
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これまでにはない手延べ麺

「縁のむすび」からはじまり、「KAKIZATO」のオリジナル商品は仏事用商品の「想ひ花」、野菜などを使った「絲」と展開。ほかにも「knot(ノット)」、「knot charm(ノットチャーム)」など、まるでスイーツのような可愛らしい見た目はギフトショーでも大賞を受賞し注目を浴びています。美しい色合いは桜やパプリカ、紫イモといった自然由来のもの。「knot charm」の上に飾られているハートやチューリップも飾り麺なので、一緒に茹でて食べることができます。「飾って、見て楽しんでいます」という声も少なくありません。賞味期限も1年、特別な想いが込められているからこそ、目で見て、味わって、長く楽しめるのが嬉しい。

「knot charm」の飾り麺は1つずつ丁寧に、手作業で散りばめていく

ハートだけではなく、桜や金魚、富山らしいチューリップが彩るものも

「とやまものアソート」では異なる「knot charm」をセットに
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培ってきた180年の、その先へ

大門素麺の技術を継承し、新たな商品も展開し続ける『柿里商店』ですが、風当たりは優しいばかりではありませんでした。設立までの2年、沢山の人達と言葉を交わし、その難しさを感じてきたといいます。しかし『柿里商店』では夫婦や家族で紡いできた大門素麺を、もっと大きな枠で繋いでいきたいと考えています。深夜から始まることが通例だった作業工程の調整や、1日がかりだった日程を分割。若い人や子どものいる女性はもちろん、県外から移住してきた人ももっと参加できるよう、工夫を続けています。長い歴史をもつ伝統的な文化だからこそ、その守り方も様々。「大門素麺を守っていきたい」という願いのもと、180年のその先へと道を作っていきます。

「大門の伝統をもっと伝えていきたい」と話す『柿里商店』の佐藤朝乃さん
柿里商店
2016年設立、富山県砺波市大門地区に江戸時代から受け継がれる「大門素麺」の製造をスタート。翌年、オリジナルブランド「KAKIZATO」を立ち上げ、大門素麺の技法を受け継いだ新商品も製造・販売中。

Instagram:@kakizato.jp
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