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映画「川っぺりムコリッタ」主演松山ケンイチさん・監督萩上直子さんインタビュー【オール富山ロケ】

オール富山ロケの映画「川っぺりムコリッタ」。主演の松山ケンイチさんと荻上直子監督に作品や富山の魅力についてお聞きしました。

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松山ケンイチ(まつやまけんいち)◆1985年、青森県生まれ。2016年「聖の青春」で第40回日本アカデミー賞優秀主演男優賞、第59回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞。主な映画出演作に、「怒り」(16)、「ブレイブ‐群青戦記‐」(21)、「BLUE/ブルー」(21)、「ノイズ」(22)、「大河への道」(22)などがある。

荻上直子(おぎがみなおこ)◆1972年、千葉県生まれ。1994年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で映画製作を学ぶ。2004年「バーバー吉野」でベルリン国際映画祭児童映画部門特別賞受賞。2006年「かもめ食堂」が大ヒット。2017年「彼らが本気で編むときは、」で日本初のベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞ほか、受賞多数。


「川っぺりムコリッタ」は、萩上直子監督オリジナル長編小説を、自身の脚本・監督で映画化した作品。北陸の小さな町を舞台にした「おいしい食」と「ささやかなシアワセ」の物語です。
誰とも関わらず生きようと決め、ボロアパート「ハイツムコリッタ」で暮らし始めた主人公・山田(松山ケンイチ)。隣の部屋に住む島田が「風呂を貸してほしい」と訪ねてきたことから、静かな日常が一変していきます。


Q.社会からはみ出してしまった人々のささやかな日常を描く作品ですが、どのような想いで監督は、映画製作を手掛けられたのですか?

荻上監督コロナ禍でよりいっそう社会からはみ出してしまった方や経済的にも孤立して困っている方がたくさんいらっしゃると思うんです。映画に登場するハイツムコリッタの住人たちも、どうにもならない状況や想いを抱えながら毎日、懸命に生きているんですよね。その姿を描くことで、どうにかして困っている方たちに手を差し伸べることができないだろうか? という想いがありました。自己責任って言葉で分断されがちですが、それで終わっちゃいけないんじゃないのかなという想いを投げかけたかったです。

Q.「ハイツムコリッタ」の住人との交流を通して社会との接点を見つけていく孤独な青年を演じられた松山さんですが、演じるなかでどのような想いを抱かれましたか?

松山さん僕が演じた山田は、最初は「生きていてもしょうがない」って思っているキャラクタ-でした。ハイツムコリッタにもそういう人たちが集まっていて、それでも人と人とのつながりやコミュニティのなかで、ささやかな幸せとか生きていく喜びを実感していく役でした。生きていてもしょうがないって思っている人が生きていてはいけない世界ではないし、ルールはもちろんあるけれど、目の前の人にちゃんと向き合うだけでも変えられることはあるんじゃないのかなって思います。身近な人に向き合うことで見えてくるものは絶対ありますから。映画を通して、大切な人と向き合う時間を持つことの大切さを感じていただけたらなと思います。

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Q.まず、塩辛工場があるということで撮影の候補地に富山が挙がったそうですが、なぜ、最終的に富山を撮影地に選んだのですか?

荻上監督ロケハンに来た時に、山があって、海があって、川がある豊かな自然にまず、惹かれました。富山って、家が大きくて同じ造りの黒い瓦屋根の家が建ち並んでいるイメージあったのですが、やっぱり家もお墓も大きくて。何よりも、人々がやさしいっていうのはすごく感じました。その当時は、コロナ禍の影響で県外ナンバーの車を見ただけで敬遠されるような風潮があったのですが、富山では全くそんなこともなく、温かく受け入れてくださって本当にうれしかったです。家とお墓が大きいだけでなく、ここに暮らす人々の心も大きいんだなぁと思いました(笑)。時間の流れがたおやかなだけじゃなく富山の皆さんの人情というか温かいものが流れているのを感じたことも大きかったですね。

Q.県内のさまざまな場所で撮影がおこなわれましたが実際に、撮影を通して気に入った場所や印象に残ったことはありましたか?

荻上監督そうですね。いろいろありますが、ゴミ山があるシーンの場所は一目見て決めました。橋梁が頭上に二本走っていて、まるで秘密基地のような雰囲気のある場所は、なかなか都内ではないので貴重だと思いました。

松山さん僕は、以前、立山の山小屋を舞台にした映画に出演したこともあり、富山と言えば、立山連峰のイメージが強かったのですが、今回、滞在してみて気付いたのが「音」ですね。東京っていつも工事とか人工的な音が止むことがないんですけどそれがあまりなくてとても静かだと感じました。撮影場所の周辺は、たまに車が通る音がするけど、人工的な音が少ない分、虫の音や風の音、木の葉が揺れる音などが聴こえてきて、心が落ち着く場所だなと思いました。

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Q.作品のなかには、黒作りや牛乳など富山でおなじみの食べ物が登場しましたが、お二人が富山で気に入った食べ物はありますか?

松山さん黒作りはもちろん取り寄せするほど大好きになったのですが、富山駅の近くの『パンドール』というパン屋さんのミックスサンドが本当おいしくて。よくスタッフさんと朝食に食べていました。

荻上監督私は、撮影が終わったあとに、よく富山駅にある『白えび亭』さんの白海老のかき揚げ丼を食べに行きました。

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9月6日にJMAX THEATERとやまで開催された舞台挨拶の様子。富山県に住む子役の2人もステージに登場した。

Q.最後に、富山の読者やファンの皆さんにメッセージをおねがいします。

松山さん日本でもこれだけの恵まれた地形と自然が揃っている富山はとても稀有な存在だと思います。ポポという果物を食べてみたいですし、なぜ富山の薬売りが青森まで熊の胆を取りに来ていたのか? ということなども含め、歴史的な部分にも惹かれます。また富山を訪れた際には、さらに魅力をじっくりと深掘りしたいと思っています。

荻上監督こんなに素敵な場所で撮影できて本当によかったです。この富山の空気感も映画ののなかにたっぷりと入っていると思いますので、ぜひ大きなスクリーンで見て感じていただきたいと思います。

◆インタビューに応じていただき、ありがとうございました。


『川っぺりムコリッタ』監督/脚本:萩上直子
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2021年/日本/120分/KADOKAWA ©2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

【STORY】
 北陸のとある町にある「イカの塩辛」工場で働き始めた主人公の山田は、社長から紹介された「ハイツムコリッタ」という安アパートで暮らし始める。そこには、庭で野菜を育てる島田、息子と墓石を売り歩く溝口と夫を亡くし娘と二人で暮らす大家の南が住んでいた。
 人と関わらず生きていこうとしていた山田の楽しみは、風呂上がりの牛乳と、炊き立ての白米だった。だが、「風呂を貸してほしい」という隣の住人・島田の来訪をきっかけに、山田の静かな日々は一変。社会からはみだしたような感じのハイツの住人たちと少しずつ関りを持ちはじめることに。
 そんなある日、幼少期に自分を捨てた父の孤独死の知らせが入る。そして、父が残した携帯電話には「いのちの電話」への着信履歴が残っていた。


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